2019年グラフ旭川7月号市民の健康ガイド
目に入れても…
1.はじめに
「目に入れても痛くないもの」何ですか? 人それぞれ違うのではないかと思いますが、「目に入れても痛くない」はずのコンタクトレンズ(CL)で目が痛くなる方が増えていらっしゃるようですので、最新のCL情報を含めまして、正しいCLとのつき合い方についてお話させてください。
2. CL の種類とその特徴
CLは大きく「ソフトレンズ」と「ハードレンズ」に分けられます。
A.ソフトコンタクトレンズ(SCL)
SCLには、1日使い捨て、定期交換型、乱視用、サークル型があります。レンズが柔らかいので、慣れるのが早く、つけ心地は良好です。目に酸素がいきにくい弱点がありますので、長時間の装用はお勧め出来ません。また、細菌やアメーバに感染する危険がありますので、しっかりとしたレンズケアが必要です。ドライアイ、アレルギーのある方には向かないこともあります。
(1)1日使い捨てレンズ
1日使ったら捨ててしまいますので、レンズに汚れがたまる心配がありません。また、洗浄・消毒などのケアが不要です。アレルギー性結膜炎にも対応しやすいという利点があります。ただし、毎日使う場合は、コスト高になってしまいます。
(2)定期交換型レンズ
2週間、1ヵ月で交換するタイプのレンズです。定期交換型は洗浄・消毒などのケアが必要ですが、1日使い捨てよりもコスト面で有利です。
(3)乱視用レンズ(トーリックレンズ)
乱視の方でも、視力矯正することができます。乱視度数、乱視軸には制限があり、すべての方に対応出来るわけではありません。
(4)サークルレンズ
黒目を大きく見せることが出来るレンズです。黒・茶色など多彩な色のものがあり、また乱視用のサークルレンズも作られています。
B.酸素透過性ハードコンタクトレンズ(HCL)
安全性には、最も優れています。ただし、慣れるまでに時間がかかり、異物感のため装用できない方もいらっしゃいます。近視度数の強い方、乱視の強い方、1日の装用時間の長い方に勧めています。
3. 遠近両用CL
CLが普及してから、年数も経過していますので、CLユーザーの中にも、老眼年齢に達している方々が増えてきています。そのニーズに応えるように遠近両用のCLが開発され、装用者が増えつつあります。遠近両用CLにも、ソフトとハードタイプの2種類のレンズがあります。遠近両用CLは、1枚のレンズの中に 遠くをよく見るための遠用部分と 近くをよく見るための近用部分が組み込まれています。それまで、HCLを使っていた人は、もちろんハードの 遠近両用レンズがお勧めです。SCLを長期間使ってきた人の中には、 角膜内皮細胞が大きくなって、その数が減ってしまっている人も いますので、詳しい検査のうえ、使用可能か相談が必要な場合もあります。
HCLの遠近両用は、レンズの中央部分に遠用部分、その周りに近用部分があります。近くを見る時は視線が下を向きますので、相対的にレンズが若干上がることによって、レンズの中心をはずれた近用部分を通して見ることになります。この方式を交代視型といいます。遠近両用眼鏡と同じような仕組みになります。
SCLの遠近両用は、同時視型といって、遠くと近く(場合によっては中間部分も)にピントがあう部分がレンズに組み込まれています。遠くと近くの両方にピントがあっているのですが、そのうちの注目している部分を脳が認識することになります。バックネット裏から野球を観戦している時に、ピッチャーに注目している時にはバックネットは気にならないし、バックネットに注目している時にはピッチャーがよく見えないといった感じです。
乱視用のSCLを使用している方にも、遠近両用SCLが最近、発売されました。今までは、SCLで対応出来なかった乱視の方も対応出来るようになりました。興味のある方は、お試しもできますので、ご相談下さいませ。
4. 眼鏡との併用
CLを使用する方(既に使用している方にも)に強調したいことは、「CLは眼鏡と併用しましょう」ということです。CLは角膜に直接載せますが、角膜に必要なものは、酸素です。角膜は涙から酸素という栄養を受けていますので、正しいフィッティングのCLで、酸素透過性の優れたレンズを、正しい使用法で装用しなければなりません。
起きている時間帯に眼鏡をかけて、CLをしていない状態の時間を持つようにしましょう。
お勧めは、お家に帰ったら眼鏡にすることです。CLは眼鏡の代わりに使えるものですが、眼鏡の替わりに使うものではありません。
5.さいごに
SCLで目が痛くなる方が増えています。1日使い捨てレンズが発売された時に、SCLの汚れに伴うトラブルが減ることが期待されましたが、実は眼障害の発生は、逆に増えています。長い時間の装用や、つけたまま寝てしまう、1日使い捨てレンズの再使用などがその原因です。SCLもシリコンタイプのより酸素が目に届くレンズが開発されていますが、不適切な使用は避けなければなりません。またHCLにも3か月で交換する定期交換型のものも開発されました。HCLの問題点である装用感が改善されてきています。遠近両用レンズを含め、選択肢が広がって来ています。どうぞ眼科専門医でご相談を。
大切な目です。CLは「目に入れても痛くないように」可愛がって下さい。
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